エピソード6 ― 好意(Liking)
親しさが、判断に入り込むとき
リフレクション
私たちは、好意をもつ相手に自然と心を開きます。
それは欠点というより、人と人が関わるための大切な力でしょう。
好意は協力を生み、緊張をやわらげ、日常に温かさをもたらします。
しかし、その親しさが、知らないうちに影響力を帯びることもあります。
好意や共感、安心感を抱く相手の言葉は、好意的に受け取ってしまう。
疑問を差しはさむ前に、理解したつもりになってしまう。
それは、納得したからというより、「その人だから」同意してしまう場面です。
それは特別な魅力だけの話ではありません。
ちょっとした共通点、褒め言葉、冗談、「わかってもらえた」という感覚―― そうした小さな要素が、判断に静かに入り込むことがあります。
このエピソードが考えたいのは、次の問いです。
好意は、どういう時には関係を支えるものとなり、どういう時に、判断に影響し、時には誤らせてしまうでしょうか。
現代社会における意味
現代社会では、影響力が「感じのよさ」を通して働く場面が少なくありません。
職場では、円滑な関係を保ちたいという思いが、
違和感を口にすることや、境界線を引くことを難しくすることがあります。
組織やコミュニティでは、好感のもてるリーダーほど、
その人への疑問や反論がためらわれる存在になる場合もあります。
批判が、意見ではなく人格への攻撃のように感じられてしまうからです。
マーケティングや公共的な発信では、
親しみやすさや「本音らしさ」が、信頼を先取りするように使われることがあり、そうなると内容を吟味する前に、「距離の近さ」が判断を導いてしまうことになりかねません。
もちろん、好意そのものが問題なのではありません。
問いはむしろ、好意が、冷静に考えることを失わせ、問うべきことも封殺し、「好意による同意」だけが独り歩きをすることにあります。
エピソード5社会的証明全エピソード エピソード7権威(近日公開)
(ccを押すと字幕が出ます)
考えるための問い
好意が、判断を鈍らせるのではなく、思いやりや勇気を引き出した経験はありますか。そのときの関係には、どんな特徴があったでしょうか。
その人のことが好きだったから、頼みごとを断りにくかった経験はありますか。そこで何が起きていたでしょうか。
関係を壊したくないという思いから、疑問や違和感を飲み込んだことはありますか。その沈黙は、何を守り、何を先送りにしたでしょうか。

